宮原 晃一郎
賢い秀雄さんの話
日吉さんの秀雄さんは今年七つ。ほんとに賢い子供だ。毎日、ランドセルをせおつていきほひよく、
「いつてまゐります。」と、ごあいさつをして、家を出る。まつすぐに、道草なんかくはないで、さつさと学校へいつて、教室では先生のおつしやることを、よく聞いてゐて、よくそのとほりにするし、問はれたことには一番早く手をあげて、答をする。家へかへつては、よくおさらへをして、夜は早くねて、朝は早く起る。ほんとに好い子。賢い秀雄さんといふ名は、そこらでたれも知らぬものがないほどだ。
ところが、此の賢い秀雄さんが、どうしたものか、一つ悪いくせをおぼえた。といふのは、いつかしら、うらの軒に立てかけてある梯子をつたつて、屋根にのぼることであつた。
「あらまた、秀雄さん、屋根にのぼつてよ。あぶないから、いけません。早くお下りなさい。」