宮原 晃一郎
熊捕り競争
一
御維新の少し前頃、北海道有珠のアイヌ部落にキクッタとチャラピタといふ二人の少年がゐました。キクッタは十七で、チャラピタは一つ下の十六でした。小さなときから、大へん仲好しで、遊ぶにも魚をとるにも、また罠をかけに行くにも、いつも一しよでした。ところが、その年になつて、二人が今までのやうに睦じくやつていけないことが起りました。それはアイヌが一ばん手柄にする熊捕りの競争を二人が始めたからです。特に本年は
「部落で、十五歳から十八歳までの少年で、一ばん早く、一ばん大きな熊をとつたもの、または一番沢山の数をとつた者には会所のお役人からりつぱな鉄砲を一挺下さる。そして部落ではその人をやがて酋長の候補者にしよう」
さういふ懸賞の附いた課題が出てゐましたから、みんなが勇んだのですがじつさいそれに応ずる力のあるのは、キクッタとチャラピタとだけよりなかつたので、自然、二人の間の競争となつてしまひました。