沖野 岩三郎

硯箱と時計

石之助が机にむかつて、算術をかんがへてゐますと、となりの金さんが来て、

「佐太さん。石さんはよく勉強するね。きつと硯箱になりますよ。」と、言ひました。すると佐太夫は、

「いいえ。石之助はとても硯箱にはなれませんよ。硯箱になるのは、あんたの所の茂丸さんですよ。」と、申しました。

ふすまのこちらで、お父さまと金さんの話をきいてゐた石之助は、へんなことをいふものだなあと思ひました。

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