鈴木 三重吉
ざんげ
一
ロシアのウラディミイルといふ町に、イワン・アシオノフといふ商人がゐました。住居と、店を二つももつてゐるほどのはたらき人で、謡をうたふことの大好きな、おどけ上手の、正直ものでした。
そのイワンが或夏、ニズニイといふ町の市へ品物をさばきに出かけました。イワンが馬車をやとつて荷物をつみ入れさせ、子どもたちや、おかみさんに、いつてくるよとあいさつをしますと、おかみさんは心配さうな顔をして、
「今日立つのはおよしになつたらどうでせう。私はいやな夢を見たんですが。」と言ひました。
鈴木 三重吉
一
ロシアのウラディミイルといふ町に、イワン・アシオノフといふ商人がゐました。住居と、店を二つももつてゐるほどのはたらき人で、謡をうたふことの大好きな、おどけ上手の、正直ものでした。
そのイワンが或夏、ニズニイといふ町の市へ品物をさばきに出かけました。イワンが馬車をやとつて荷物をつみ入れさせ、子どもたちや、おかみさんに、いつてくるよとあいさつをしますと、おかみさんは心配さうな顔をして、
「今日立つのはおよしになつたらどうでせう。私はいやな夢を見たんですが。」と言ひました。