鈴木 三重吉・リシュタンベルジェ アンドレ
青い顔かけの勇士
一
トゥロットのお家は貴族で、お父さまは海軍の士官ですが、今は遠方へ航海中で、トゥロットはお母ちやまや女中のジャンヌたちと一しよに、海岸の別荘でくらしてゐます。トゥロットにはイギリス人の或ミスが、まいにち家庭教師にかよつて来て、町中や浜べへつれて出たりして、いろ/\のことををしへてゐます。
「おぼつちやま、ミスがいらしつて、おまちになつていらつしやいますよ。」と、けさもジャンヌがよびに来ました。トゥロットは、つんぼのやうなふりをして、ぽかんと窓の外を見てゐました。
「これ、坊や。ジャンヌがよんでるのが聞えないの。」とお母ちやまがおつしやいました。