鈴木 三重吉・リシュタンベルジェ アンドレ
かたつむり
一
トゥロットのお母ちやまは、朝、いろんな人たちと一しよに、馬車でそとへお出かけになりました。ド・ヴレーさんといふよそのをぢさまが、馬のたづなをとり、もう一人のをぢさまがラッパをならして、みんなでたのしさうに出ていきました。トゥロットは、ちひさくて、足手まとひになるので別荘にのこされました。
トゥロットは、女中のジャンヌと二人であそぶつもりでゐたのですのに、お母ちやまはトゥロットがたいくつするだらうとおもつて、先生のミスに、来てやつて下さいとおたのみになつたものです。トゥロットは、あゝあと、がつかりしました。お母ちやまは、トゥロットにさうだんもなさらないで、いやな人をおよびになるのですからたまりません。
ミスはお庭のおくのべンチにこしかけて、偉大なお鼻の上にめがねをのつけて、顔中のすぢ一つさへうごかさないで、自動器械のやうに、さく/\とご本をめくつてゐます。トゥロットは、ミスにしかられないやうに、何かわるくないことをして、時間をつぶさなければなりません。それでさん/″\かんがへて、けふはお庭の中をくはしく見て歩いてみようとおもひつきました。