牧野 信一
街上スケツチ
明るいうちは風があつたが、陽が落ちると一処に綺麗に凪いで、街は夢のやうにうつとりとした。――円タクの運転手が、今年の冬は実に長かつた! と力を込めて話しかけた後に、然しまた、これからは事故が多くなるので、浮々しては居られない、事故では自転車が一番多い、居眠りをしながら走つてゐるのがあるのだから……。
「だが、今夜のやうな陽気だと、吾々もつい眠くなりさうだ。気をつけなければならない――」
などゝ呟いでゐた。
「未だ歩いてゐたのか?」
牧野 信一
明るいうちは風があつたが、陽が落ちると一処に綺麗に凪いで、街は夢のやうにうつとりとした。――円タクの運転手が、今年の冬は実に長かつた! と力を込めて話しかけた後に、然しまた、これからは事故が多くなるので、浮々しては居られない、事故では自転車が一番多い、居眠りをしながら走つてゐるのがあるのだから……。
「だが、今夜のやうな陽気だと、吾々もつい眠くなりさうだ。気をつけなければならない――」
などゝ呟いでゐた。
「未だ歩いてゐたのか?」