牧野 信一

東京駅にて感想

一

久しい間辺卑な田舎で暮した上句なので、斯うして東京に来て見ると僕は、何を見ても、何処を訪れても、面白く、刺戟が爽かで、愉快で/\、毎日々々天気さへ好ければピヨン/\と出歩いて寧日なき楽天家だ、金貨だつて? そいつはまあ無い日の方が多いけれど、無ければ無いで公園を散歩する、スポーツを見物する、友達のところからオートバイを借りて来て矢鱈に街中を駆け廻つて、気分を晴し、同時に見聞を広める……。

「厭々々々! 公園の散歩なんては决してお供はしたくないわ――」

芝居を観る、活動を見物する、銀座を歩く、酒場を飛び廻る、議論を戦はせる――マメイドなんかに手紙を書く暇なんて決してなかつたのだ――。

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