牧野 信一
寄生木と縄梯子
「ヤドリ木――知つてゐますか?」
「……知らんのう、実物を見たら、あゝ、これか――と思ふかも知んないが……ヤドリ木? 聞いたこともない。」
誰に訊ねても同じ返答ばかりであつた。私は、小屋を出てから同じ質問を若い木挽にも訊いた。山頭の炭焼の老人にも訊いた。鈴を鳴して橇道を滑走して来る橇の一隊をさへぎつて、皆なに訊いたが、一様に首をかしげて顔を見合せてゐるだけだつた。
「有りがたう――兎も角僕はそれを是非とも探して来なければならないので、暫くの間休ませて貰ひますよ。タイピストと二人――」