牧野 信一
鸚鵡のゐる部屋
一
フロラが飼つてゐる鸚鵡は、好く人に慣れてゐて籠から出してやると、あちこちの部屋をヨタヨタと散歩したり、階段を滑稽な脚どりで昇り降りしたりするが、
「お早う」も、
「今日は――」も知らなかつた。せめて二つや三つの言葉位は教へようと、はじめのうちは皆がかはるがはる努力したが、まるで教師を馬鹿にしてゐる見たいにキヨトンとしてゐるばかりで、決して何んな簡単な言葉でも覚えなかつたから、今では皆あきらめてしまつて、
牧野 信一
一
フロラが飼つてゐる鸚鵡は、好く人に慣れてゐて籠から出してやると、あちこちの部屋をヨタヨタと散歩したり、階段を滑稽な脚どりで昇り降りしたりするが、
「お早う」も、
「今日は――」も知らなかつた。せめて二つや三つの言葉位は教へようと、はじめのうちは皆がかはるがはる努力したが、まるで教師を馬鹿にしてゐる見たいにキヨトンとしてゐるばかりで、決して何んな簡単な言葉でも覚えなかつたから、今では皆あきらめてしまつて、