牧野 信一

海路

「登志さん、果物でも持つて行つたらどうなの、雑誌ばかり読んでゐないで……」

ナイフや皿の用意をととのへながら、母は登志子を促した。

「キクに言つてよ。あの集りの中へ這入つて行くのは、あたし何だか気まりがわるいのよ、あたしが行くと皆が変に黙つてしまふんですもの……」

「お前さんが、あんまり気どつてゐるからぢやないの。」

青空文庫の作品カード