牧野 信一
二日間のこと
八月×日
――蜂雀の真実なる概念を単に言葉の絵具をもつて描かんと努むるも、それは恰も南アメリカの生ける日光を瓶詰となして、大西洋を越え、イギリスの空に輝く雨と降り灑がうとするが如き不可能事に他ならぬ――。
そんな章句を読みながら、いつかうとうと、眠ると、一羽の蜂雀が渺望たる海の上を飛んでゆく夢を見た。見渡すかぎり睦の影も見あたらず、船に乗つてゐる感もないのに、いつたい自分は何処の隅から、この光景を眺めてゐるのか? と自問して、眼が醒めた。
「ゆうべ何時ごろお帰りになつたの?」