牧野 信一
山彦の街
一
哄笑の声が一勢に挙つたかと思ふと、罵り合ひが始まつてゐる――鳥のやうな声で絶叫する者がある、女の悲鳴が耳をつんざくばかりに聞えたかと思ふと、男の楽し気な合唱が始まつてゐる――殴れ! とか、つまみ出してしまへ! とか、そんな凄まじい声がして、
「あゝ、痛いツ!」
「御免だ……」
牧野 信一
一
哄笑の声が一勢に挙つたかと思ふと、罵り合ひが始まつてゐる――鳥のやうな声で絶叫する者がある、女の悲鳴が耳をつんざくばかりに聞えたかと思ふと、男の楽し気な合唱が始まつてゐる――殴れ! とか、つまみ出してしまへ! とか、そんな凄まじい声がして、
「あゝ、痛いツ!」
「御免だ……」