牧野 信一
毒気
一
「傍の者までがいらいらして来る。」
私が、毎日あまりに所在なく退屈さうに碌々としてゐるので、母も、相当の迷惑をおしかくしながら、私のために気の毒がるやうにそんなことを云つた。――「折角、みんなと一処に来てゐるのにね。」
「えゝ、だけど別段、――別段、どうもね、これと云つて……せめて海でもおだやかになつて呉れると好いんだがな。」と、私はぼんやり天井を視詰めたまゝ呟いだ。
牧野 信一
一
「傍の者までがいらいらして来る。」
私が、毎日あまりに所在なく退屈さうに碌々としてゐるので、母も、相当の迷惑をおしかくしながら、私のために気の毒がるやうにそんなことを云つた。――「折角、みんなと一処に来てゐるのにね。」
「えゝ、だけど別段、――別段、どうもね、これと云つて……せめて海でもおだやかになつて呉れると好いんだがな。」と、私はぼんやり天井を視詰めたまゝ呟いだ。