田中 貢太郎
白い小犬を抱いた女
某夜、某運転手が護国寺の墓地を通っていると、白い小犬を抱いた女が来て車を停めた。そこで運転手は女の云うままに逢初橋まで往くと、女が、
「ちょっと待っててね」
と云って、犬を抱いたままおりて、傍の立派な門構の家へ入って往ったが、一時間近くなって出て来ないので、運転手はしかたなしにその家へ往った。すると一人の老婦人が出て、
「私の家には、女の子はいないのですが」
田中 貢太郎
某夜、某運転手が護国寺の墓地を通っていると、白い小犬を抱いた女が来て車を停めた。そこで運転手は女の云うままに逢初橋まで往くと、女が、
「ちょっと待っててね」
と云って、犬を抱いたままおりて、傍の立派な門構の家へ入って往ったが、一時間近くなって出て来ないので、運転手はしかたなしにその家へ往った。すると一人の老婦人が出て、
「私の家には、女の子はいないのですが」