田中 貢太郎

母親に憑る霊

大正八年二月二十六日、西比利亜出征の田中中佐の一隊は、過激派軍のために包囲せられて、クスラムスコエ附近で全滅したが、悲壮極まるその戦闘で、名誉の戦死を遂げた小島勇次郎と云う軍曹は、大分県大野郡東大野村の出身であった。

その勇士小島勇次郎が戦死してから半ヶ月ばかり経ってのこと、その生家では年とった母親が、某夜突然寝床の上に飛び起きて叫んだ。

「起きてくれ、お父さんも、弟も妹も、皆起きてここへ来てくれ、話がある」

それは鋭い男性的な声であった。父親は勇次郎の戦死の通知があって以来、老妻が非常に落胆していたので、ついすると発狂したかも判らない。病気になったとすれば逆らってもいけないと思って、すぐ家内中の者を起してその前へ往った。すると、

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