田中 貢太郎

娘の生霊

某相場師の娘が、父親にねだって買ってもらった衣服を、知りあいの裁縫師の処へ縫わしにやった。なにしろ相場で巨万の富を積んだ家のことであるから、その衣服も金目のかかったりっぱな物であったろう。またそうした衣服であるから期日も急ぐので、裁縫師は他の仕立物を後廻しにして裁縫にとりかかったが、期日が翌日の朝になっているので、その夜は一時近くまで仕事をして、やっと縫いあげたところで客があった。裁縫師は夜遅くなって何人が来たろうと思って、入口の雨戸をあけると、それは相場師の娘であった。

「おや、まあ、お嬢さん」

娘は光沢のいい顔に微笑を見せた。

「明日の朝までに、どうかと思って、見に来たのよ」

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