豊島 与志雄
活人形
一
むかし、インドに、ターコール僧正というえらいお坊さまがいました。むずかしい病気をなおしたり鬼をおいはらったり、ときには、死人をよみがえらしたりするほど、ふしぎな力をそなえていられるという評ばんでした。そしてたいへん慈悲深くて、なんでも貧乏な人たちにめぐんでやり、自分は、弟子の若いお坊さんと二人きりで、大きな、ぼだい樹のそばの小さな家に、つつましく暮していました。
そのターコール僧正が、ある日、庭のぼだい樹のこかげのベンチに腰をおろして、休んでいますと、みすぼらしいなりをした、年とった男がたずねてきました。悲しそうなおどおどしたようすで、僧正様にお祈りをしていただきたいと申すんです。
「お祈りはわたしの仕事だ。してあげましょう」とターコール僧正は答えました。