泉 鏡花

取舵

上

「こりゃどうも厄介だねえ。」

観音丸の船員は累々しき盲翁の手を執りて、艀より本船に扶乗する時、かくは呟きぬ。

この「厄介」とともに送られたる五七人の乗客を載了りて、観音丸は徐々として進行せり。

青空文庫の作品カード