坂口 安吾
霓博士の廃頽
1
星のキラキラとした夜更けのことで、大通りの睡り耽つたプラタナの陰には最早すつかり濡れてしまつた街燈が、硝子の箱にタラタラと綺麗な滴を流してゐたが、――シルクハットを阿弥陀に被り僕の腕に縋り乍らフラフラと千鳥足で泳いでゐた霓博士は、突然物凄い顔をして僕を邪慳に突き飛ばした。
「お前はもう帰れ!」
「しかし、だつて、先生はうまく歩けないぢやありませんか――」
坂口 安吾
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星のキラキラとした夜更けのことで、大通りの睡り耽つたプラタナの陰には最早すつかり濡れてしまつた街燈が、硝子の箱にタラタラと綺麗な滴を流してゐたが、――シルクハットを阿弥陀に被り僕の腕に縋り乍らフラフラと千鳥足で泳いでゐた霓博士は、突然物凄い顔をして僕を邪慳に突き飛ばした。
「お前はもう帰れ!」
「しかし、だつて、先生はうまく歩けないぢやありませんか――」