坂口 安吾

新らしき文学

(一) その本質に就て

近年、新興芸術の名に於て幾多の文芸運動が試みられてきたが、徒らに皮相の新奇を追ふほかに為すところを知らなかつた。従来幾多の此の如き新(?)文学運動の完全な失敗は、「新らしさ」を誤らしめ、同時に文学を過らしめた。

私の考へによれば、芸術は反撥精神のあらはれであり、時代創造的な激しい意志によつて為さるべきものであると思はれるに拘らず、最近日本文学の新しい傾向は、老人の趣味に一致することを最も純粋と見做し、最も無気力な、自慰的な人間探究に過つた亢奮を感じてゐる。不動のもの、永遠のものは已に亡びてゐる。われわれは変化の中に、発展の一過程の中に、反撥から創造へ向ふ人間を探究し創りつづけてゆかなければならない。

然し、日本文壇の此の過つた新傾向は、実は常規を逸した従来幾多の新芸術運動の浅薄きはまる新らしさが、人に新らしさの本質を疑はしめた罪による。

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