泉 鏡花・泉 鏡太郎
二た面
送り猫
話は別にある……色仕掛で、あはれな娘の身の皮を剥いだ元二と云ふ奴、其の袷に一枚づゝ帶を添へて質入れにして、手に握つた金子一歩としてある。
此の一歩に身のかはを剥がれたために可惜や、お春と云ふ其の娘は繼母のために手酷き折檻を受けて、身投げをしたが、其も後の事。件の元二はあとをも見ないで、村二つ松並木を一帳場で瓜井戸の原へ掛つたのが彼これ夜の八ツ過であつた。
若草ながら廣野一面渺茫として果しなく、霞を分けてしろ/″\と天中の月はさし上つたが、葉末に吹かるゝ我ばかり、狐の提灯も見えないで、時々むら雲のはら/\と掛るやうに處々草の上を染めるのはこゝに野飼の駒の影。