坂口 安吾
落語・教祖列伝
カメは貧乏大工の一人息子であったが、やたらに寸法をまちがえるので、末の見込みがなかった。頭が足りなかったのである。そのくせ、大飯をくう。両親は末怖しくなって、人夫をさがしていた山の木コリにあずけた。木コリが試験してみると、鋸だけはうまくひく。器用なことはできない代りに、根気がよくて、バカ力があるので、木コリには向いている。しかし、まだ十の子供のことだから、
「山へ行くと、友だちはいないぞ。人間の顔も見ることができないぞ。ムジナや蛇が親類だ。それでも我慢できるか」
「腹いっぱい食わせてくれれば、どこにでも、いられる」
それがカメの返事であった。試験に合格して、山にこもった。