坂口 安吾

都会の中の孤島

アナタハン島の悲劇はむろん戦争がなければ起らなかった。第一たがいに顔を知り合うこともなく、それぞれが相互に無関係の一生を送ったであろう。

しかし、アナタハンのような事件そのものは、戦争がなければ起り得ない性質のものではない。

一人の女をめぐって殺し合うのは、山奥の飯場のようなアナタハンに外見の似た土地柄でなくとも、都会の中でもザラにありうることだ。

アナタハンには法律も刑事も存在しなかったから、各人の心理は我々とちがって開放的で、そこにおのずから差があった筈だと見るのもうがちすぎているようだ。

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