泉 鏡花・泉 鏡太郎
画の裡
「旦那樣、畫師ぢやげにござりまして、ちよつくら、はあ、お目に懸りたいと申しますでござります。」
旦那は徐羣夫と云ふ田舍大盡。忘其郡邑矣、とあるから何處のものとも知れぬが、案ずるに金丸商店仕入れの弗箱を背負つて、傲然と控へる人體。好接異客、は可いが、お追從連を眼下に並べて、自分は上段、床の前に無手と直り、金屏風に御威光を輝かして、二十人前の塗ばかり見事な膳、青芋※[#「くさかんむり/哽のつくり」、U+8384、90-1]の酢和で、どぶろくで、
「さ、さ、誰も遠慮せんで。」
とじろ/\と睨※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)す輩と見えた。