長谷川 時雨
一世お鯉
一
「そりゃお妾のすることじゃないや、みんな本妻のすることだ。姉さんのしたことは本妻のすることなのだ」
六代目菊五郎のその銹た声が室の外まで聞える。
真夏の夕暮、室々のへだての襖は取りはらわれて、それぞれのところに御簾や几帳めいた軽羅が垂らしてあるばかりで、日常の居間まで、広々と押開かれてあった。
長谷川 時雨
一
「そりゃお妾のすることじゃないや、みんな本妻のすることだ。姉さんのしたことは本妻のすることなのだ」
六代目菊五郎のその銹た声が室の外まで聞える。
真夏の夕暮、室々のへだての襖は取りはらわれて、それぞれのところに御簾や几帳めいた軽羅が垂らしてあるばかりで、日常の居間まで、広々と押開かれてあった。