田山 花袋

朝

一

家の中二階は川に臨んで居た。其処にこれから発たうとする一家族が船の準備の出来る間を集つて待つて居た。七月の暑い日影は岸の竹藪に偏つて流るゝ碧い瀬にキラキラと照つた。

涼しい樹陰に五六艘の和船が集つて碇泊して居るさまが絵のやうに下に見えた。帆を舟一杯にひろげて干して居るものもあれば、陸から一生懸命に荷物を積んで居るものもある。此処等で出来る瓦や木材や米や麦や――それ等は総て此川を上下する便船で都に運び出されることになつて居た。その向こうには、某町から某町に通ずる県道の舟橋がかゝつてゐて、駄馬や荷車の通る処に、橋の板の鳴る音が静かな午前の空気に轟いて聞えた。

橋のすぐ下では、船頭が五六人、せつせと竹の筏を組んで居た。

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