長谷川 時雨
朱絃舎浜子
一
木橋の相生橋に潮がさしてくると、座敷ごと浮きあがって見えて、この家だけが、新佃島全体ででもあるような感じに、庭の芝草までが青んで生々してくる、大川口の水ぎわに近い家の初夏だった。
「ここが好いぞ、いや、敷ものはいらん、いらん。」
広い室内の隅の方へ、背後に三角の空を残して、ドカリと、傍床の前に安坐を組んだのは、箏の、京極流を創造した鈴木鼓村だった。
長谷川 時雨
一
木橋の相生橋に潮がさしてくると、座敷ごと浮きあがって見えて、この家だけが、新佃島全体ででもあるような感じに、庭の芝草までが青んで生々してくる、大川口の水ぎわに近い家の初夏だった。
「ここが好いぞ、いや、敷ものはいらん、いらん。」
広い室内の隅の方へ、背後に三角の空を残して、ドカリと、傍床の前に安坐を組んだのは、箏の、京極流を創造した鈴木鼓村だった。