長谷川 時雨

豊竹呂昇

私は今朝の目覚めに戸の透間からさす朝の光りを眺めて、早く鶯が夢をゆすりに訪れて来てくれるようになればよいと春暁の心地よさを思った。如月は名ばかりで霜柱は心まで氷らせるように土をもちあげ、軒端に釣った栗山桶からは冷たそうな氷柱がさがっている。崖の篠笹にからむ草の赤い実をあさりながら小禽は囀っている。

寒明けの日和はおだやかで、老人たちが恋しがるばかりではない日の光りはのどかだ。

(ほんとに早く鶯の声を聴くようになるといいな)

あの寝ざめの、麗音をなつかしみながら私は呟やいた。町中に生れ育った私は、籠に飼われない小禽が、障子のそとへ親しんで来てきかせてくれる唄声を、どれほどよろこんでいたかしれない。真冬の二月は頬白も目白も来てくれないので、朝はいつもかわらない雀の挨拶と、夜は時おり二つ池へおりる、雁のさびしい声をきくばかりだった。

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