長谷川 時雨
平塚明子(らいてう)
一
らいてうさま、
このほどお体は如何で御座いますか。爽やかな朝風に吹かれるといかにもすがすがしくて、今日こそ、何もかもしてしまおうと、日頃のおこたりを責められながら、私は、貧乏な財袋よりもなお乏しい頭の濫費をしつつ無為な日を送っております。
御あたりはお静かでございますか。田舎での御生活は、どこやら不如意なようでいて、充実されたものであろうと、お羨しくぞんじます。あなたのお体にもよし、御家庭にもしみじみとした味の出た事と存じます。お子さまがたは、御自分たちのお母さまとして、日夜お傍に親しむことのお出来になるのを、どんなに現わし得ない感謝をもって、およろこびなされている事かと、あたくしでさえ嬉しい心地がいたします。そして風物は悠々として、あなたの御健康を甦えらせていることとぞんじます。