久生 十蘭
顎十郎捕物帳
魚釣談義
神田小川町『川崎』という釣道具屋。欅の大きな庇看板に釣鈎と河豚を面白い図柄に彫りつけてあるので、ひとくちに、神田の小河豚屋で通る老舗。
その店先に、釣鈎や釣竿、餌筥などをところも狭にとりひろげ、ぬうとかけているのが顎十郎。所在なさに、とうとう釣りでもはじめる気と見える。
顎十郎と向きあっているのは、辣薤面のひどく仔細らしい番頭で、魚釣りの縁起、釣りの流派、潮のみちひきから餌のよしあしと、縷々としてうむことがない。
久生 十蘭
魚釣談義
神田小川町『川崎』という釣道具屋。欅の大きな庇看板に釣鈎と河豚を面白い図柄に彫りつけてあるので、ひとくちに、神田の小河豚屋で通る老舗。
その店先に、釣鈎や釣竿、餌筥などをところも狭にとりひろげ、ぬうとかけているのが顎十郎。所在なさに、とうとう釣りでもはじめる気と見える。
顎十郎と向きあっているのは、辣薤面のひどく仔細らしい番頭で、魚釣りの縁起、釣りの流派、潮のみちひきから餌のよしあしと、縷々としてうむことがない。