久生 十蘭
顎十郎捕物帳
客の名札
勝色定紋つきの羽二重の小袖に、茶棒縞の仙台平の袴を折目高につけ、金無垢の縁頭に秋草を毛彫りした見事な脇差を手挾んでいる。どう安くふんでも、大身の家老かお側役といったところ。
五十五六の篤実な顔立ち。なにか心配ごとがあると見えて白い鬢のあたりをそそけさせ、いやな色に顔を沈ませている。重厚に、膝に手をおいて、
「実は……」
久生 十蘭
客の名札
勝色定紋つきの羽二重の小袖に、茶棒縞の仙台平の袴を折目高につけ、金無垢の縁頭に秋草を毛彫りした見事な脇差を手挾んでいる。どう安くふんでも、大身の家老かお側役といったところ。
五十五六の篤実な顔立ち。なにか心配ごとがあると見えて白い鬢のあたりをそそけさせ、いやな色に顔を沈ませている。重厚に、膝に手をおいて、
「実は……」