久生 十蘭
顎十郎捕物帳
神隠し
もう子刻に近い。
寒々としたひろい書院の、金蒔絵の京行灯をへだてて、南町奉行池田甲斐守と控同心の藤波友衛が、さしうつむいたまま、ひっそりと対坐している。
深沈たる夜気の中で、とぎれとぎれに蟋蟀が鳴いている。これで、もうかれこれ四半刻。どちらも咳ひとつしない。
久生 十蘭
神隠し
もう子刻に近い。
寒々としたひろい書院の、金蒔絵の京行灯をへだてて、南町奉行池田甲斐守と控同心の藤波友衛が、さしうつむいたまま、ひっそりと対坐している。
深沈たる夜気の中で、とぎれとぎれに蟋蟀が鳴いている。これで、もうかれこれ四半刻。どちらも咳ひとつしない。