久生 十蘭
顎十郎捕物帳
あぶれ駕籠
「やけに吹きっつぁらしますね」
「うるるる、これはたまらん。睾丸が凍えるわ」
師走からこのかた湿りがなく、春とはほんの名ばかり、筑波から来る名代の空ッ風が、夕方になると艮へまわり、梢おろしに枯葉を巻き土煙をあげ、斬りつけるようにビュウと吹き通る。いやもう骨の髄まで凍えそう。
久生 十蘭
あぶれ駕籠
「やけに吹きっつぁらしますね」
「うるるる、これはたまらん。睾丸が凍えるわ」
師走からこのかた湿りがなく、春とはほんの名ばかり、筑波から来る名代の空ッ風が、夕方になると艮へまわり、梢おろしに枯葉を巻き土煙をあげ、斬りつけるようにビュウと吹き通る。いやもう骨の髄まで凍えそう。