久生 十蘭

顎十郎捕物帳

二十六夜待

七月二十六日は二十六夜待で、芝高輪、品川、築地の海手、深川洲崎、湯島天神の境内などにはほとんど江戸じゅうの老若が日暮まえから押しだして月の出を待つ。

なかんずく、品川はたいへんな賑い。名のある茶屋、料理屋の座敷はこの夜のためにふた月も前から付けこまれる。

海にむいた座敷を打ちぬいてだれかれなしの入れごみ。衝立もおかず仕切もなく、煤払いの日の銭湯の流し場のようなぐあいになって、たがいに背中をすりあわせながら三味線をひいたり騒いだりしながら月を待っている。

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