久生 十蘭
顎十郎捕物帳
お姫様
「なんだ、なんだ、てめえら。……客か、物貰いか、無銭飲か。ただしは、景気をつけに来たのか。店構えがあまり豪勢なんで、びっくりしたような面をしていやがる。……やいやい、入るなら入れ、そんなところに突っ立ってると風通しが悪いや」
繩暖簾をくぐったところをズブ六になった中間体が無暗にポンポンいうのを、亭主がおさえておいて、取ってつけたような揉手。
「おいでなさいまし。お駕籠屋さんとお見うけしましたが、景気をつけに来てくださいましてありがとうございます。……酒は灘の都菊、産地仕入れでございますから量はたっぷりいたします。なにとぞ嚮後ごひいきに、へい」