勝 海舟
黙々静観
一個人の百年は、ちやうど国家の一年位に当るものだ。それ故に、個人の短い了見を以て、余り国家の事を急ぎ立てるのはよくないよ。徳川幕府でも、もうとても駄目だと諦めてから、まだ十年も続いたではないか。
時に古今の差なく、国に東西の別はない、観じ来れば、人間は始終同じ事を繰り返して居るばかりだ。生麦、東禅寺、御殿山。これ等の事件は、皆維新前の蛮風だと云ふけれども、明治の代になつても、矢張り、湖南事件や、馬関騒動や、京城事変があつたではないか。今から古を見るのは、古から今を見るのと少しも変りはないサ。
此頃元勲とか何とか、自分でもえらがる人達に、かういふ歌を詠んで遣つたよ。
時ぞとて咲きいでそめしかへり咲