小熊 秀雄

土の中の馬賊の歌

私はこゝにひとつの思想を盛つた食餌を捧げるそれは悪いことかもしらないまた善いことかもしらない、たゞ私が信じてゐるだけのことである。

人々が寝静まつた真夜中にどこからともなく土の中から唄が聞えてくる、がや/″\と大勢で話あつたり合唱したりそれは静かな賑やかな土の中の世界から洩れてくる陽気で華やかな馬賊の歌であつた。

歌は調子のよい賑やかなものであるが街の人々はふしぎにこの陽気な唄を地べたに聞くと悲しくなつて了ふのであつた。

『小父さん、草の根がガチャガチャ鳴らしてゐるやうな響きがするよ』

青空文庫の作品カード