小熊 秀雄
殴る
(一)
俺はつくづくと考へる。世の中の奴らは、もちろん嘘で固まつてゐるといふ事実だ。
情なくなるから、あんまり他人さまのことはいふまい。手近なところで、俺の信じてゐる彼女の態度はどうだ、だんだん世間なみに嘘をおぼえこみ、なんにもないところから、鶏を飛び出させたりする手品師のやうな真似を始めだした。
――真個うにお可笑な方ね、お金が無くなれば、乞食のやうな惨めな気もちになつてしまふのね。
小熊 秀雄
(一)
俺はつくづくと考へる。世の中の奴らは、もちろん嘘で固まつてゐるといふ事実だ。
情なくなるから、あんまり他人さまのことはいふまい。手近なところで、俺の信じてゐる彼女の態度はどうだ、だんだん世間なみに嘘をおぼえこみ、なんにもないところから、鶏を飛び出させたりする手品師のやうな真似を始めだした。
――真個うにお可笑な方ね、お金が無くなれば、乞食のやうな惨めな気もちになつてしまふのね。