宮本 百合子
日記
一月一日(土曜)〔書信〕大久保明子〔読書〕私は今日一日何も読まなかった事を恥じる。
之から新らしい一年が始まると云う事については又新らしい幸福な勇気が自分に湧き上って来るのを感じる。
久米さんが来てこの間から私の頭をなやまして居た人類の愛と云う事について話が出た。母としての人の云う事、一人の男として思う事をのべる人との間には異った点があんまり大きい。
自分は何か自分の考えを得なければならないと思う事が苦しい位明かに思われて来る。考える事は私にとって今は労力の消費をはげしくするにすぎないと云う人もあるけれ共、私は考えはあくまでもねられなければならないと云う考えから出来るだけ考える。思索を以て始められた此の一年は私にとって意味深い事である。