宮本 百合子

日記

一月一日

 今年は好い正月な筈だ――と云うと少し可笑しいが、三十一日までは、何となしにぎやかで、快い正月になりそうな心持がして居た。けれども、なって見ると少し違った。妙に皆の心の中に負けおしみのようなこだわりがあって、長閑なところが少ない。それは、云うまでもなく、くに[#国男]が警察から連れてこられて、あのはじの部屋にポツンとして居るからなのである。互に不調和な心持でいけない。

夜になって、三組町の親類へやるに、俥が初出でいやがるからと云うので、私が坂本氏のところへ行った。まるで世界の違ったように、町中がしずかで、どっちかと云えば、陰気なほどである。元旦の夜よりは、大晦日の方が、活き活きして居て心持が、どんなにいいか分らない。

坂本さんの島田は大変よく似合って、美くしく見えた。女の人は、あんな束髪なんかよりああ云う頭の方が、どんなにかいい。

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