宮本 百合子

日記

二月二十七日

 この間うちの風が珍しくきょうはやんでいる。おだやかな日なり。午後土蔵から『史籍集覧』の本箱を二階へもち出して貰う、全くガタガタになっている。が、匂いをかいでみると楠でそこに入っていた本はごく少ししか虫がくっていない。ちょいちょいと興味のあるものも見出す、永年の間に端本になったものもかなりある様子だ。手を洗い、羽織を着かえ足袋をはきかえ、ああちゃんにつれて貰って出初めを行う。染ものや迄がよかろうという、巴やの前ならちっとも坂がないから。一昨年十二月九日以来満十四ヵ月と十八日目。足もとは割合大丈夫だが道路が反射して白くてやりきれない。人の顔も。つむぎと小浜の染直し。つむぎ十五円小はま十九円びっくりした。四月からは十円以上に三割つくよし(税)裾まわし一枚分五円だそうだ。つい三年前長襦袢を染めたときは七円だった。

かえって早速お茶を二杯ものむ。やれやれと。お婆さんてこんななのかしらと笑った。歩くのに背中がくたびれるというのは初めて知った。

寿江子北向き室で往生し火鉢の灰を入れる騒動している。

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