正岡 子規
かけはしの記
浮世の病ひ頭に上りては哲学の研究も惑病同源の理を示さず。行脚雲水の望みに心空になりては俗界の草根木皮、画にかいた白雲青山ほどにきかぬもあさまし。腰を屈めての辛苦艱難も世を逃れての自由気儘も固より同じ煩悩の意馬心猿と知らぬが仏の御力を杖にたのみていろ/\と病の足もと覚束なく草鞋の緒も結びあへでいそぎ都を立ちいでぬ。
五月雨に菅の笠ぬぐ別れ哉
知己の諸子はなむけの詩文たまはる。
ほととぎすみ山にこもる声きゝて木曾のかけはしうちわたるらん 伽羅生卯の花を雪と見てこよ木曾の旅 古白山路をり/\悲しかるへき五月哉 同