織田 作之助
郷愁
夜の八時を過ぎると駅員が帰ってしまうので、改札口は真っ暗だ。
大阪行のプラットホームにぽつんと一つ裸電燈を残したほか、すっかり灯を消してしまっている。いつもは点っている筈の向い側のホームの灯りも、なぜか消えていた。
駅には新吉のほかに誰もいなかった。
たった一つ点された鈍い裸電燈のまわりには、夜のしずけさが暈のように蠢いているようだった。まだ八時を少し過ぎたばかしだというのに、にわかに夜の更けた感じであった。
織田 作之助
夜の八時を過ぎると駅員が帰ってしまうので、改札口は真っ暗だ。
大阪行のプラットホームにぽつんと一つ裸電燈を残したほか、すっかり灯を消してしまっている。いつもは点っている筈の向い側のホームの灯りも、なぜか消えていた。
駅には新吉のほかに誰もいなかった。
たった一つ点された鈍い裸電燈のまわりには、夜のしずけさが暈のように蠢いているようだった。まだ八時を少し過ぎたばかしだというのに、にわかに夜の更けた感じであった。