牧 逸馬

モンルアルの狼

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モンタヴェルンの森の小径に、顔と頭部に六個処の傷を負って全身血染れの若い女の屍体が横たわっていた。衣服は糸のように引裂かれて裸体に近く、下半身は土塊枯枝等で覆われ、顕著な暴行の痕跡が見られた。屍体の傍らに、手巾一枚、当時仏蘭西の女性間に流行していた糊の付いた洋襟、小型の聖書、黒笹絹の婦人帽、黄革の女靴一足などが散乱して、前夜の雪が解けて、水から引上げたように濡れていた。これらの所持品を手懸りに間もなく判明したところに依ると、被害者はマリイ・バダイユ。二十二歳。三日前まで附近の里昂市で女中奉公をしていた。

田舎から人が来て、今直ぐ移れるようなら、自分の近処にもっと好い口があるから世話してやろうと言われて、里昂の働き先から逃げるように暇を取って出掛けたのだと言う。

現場は、森を貫いている本道から鳥渡傍へ外れたところで、樫の老樹の根元に潅木が生い繁っている。滅多に人の行く場処ではない。発見したのは、このモンタヴェルンの森の向側に別荘を有っている馬耳塞の衣裳屋マリアンヌ・カミイル夫人、猟犬を馴らしに出て見つけたのだ。

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