佐藤 紅緑
少年連盟
暴風雨
雲は海をあっし海は雲をける。ぼうぼうたる南太平洋の大海原に、もう月もなければ星もない。たけりくるう嵐にもまれて黒暗々たる波濤のなかを、さながら木の葉のごとくはしりゆく小船がある。時は三月の初旬、日本はまだ寒いが、南半球は九月のごとくあたたかい。
船は一上一下、奈落の底にしずむかと思えばまた九天にゆりあげられる、嵐はますますふきつのり、雷鳴すさまじくとどろいていなづまは雲をつんざくごとに毒蛇の舌のごとくひらめく。この一閃々々の光の下に、必死となってかじをとりつつある、四人の少年の顔が見える。
みよしに近く立っているのは、日本の少年大和富士男である。そのつぎにあるは英国少年ゴルドンで、そのつぎは米国少年ドノバンで、最後に帆綱をにぎっているのは、黒人モコウである。