上村 松園
作画について
自分の画歴をふりかえって見ますと、ある時代には徳川期の錦絵的な題材を好んで主題にとっていたり、またある時代には支那風の影響に強く支配されていたりして、いろいろと変遷してきたものです。
ですから画題も明治二十八年第四回内国博出品の「清少納言」や、その後の「義貞勾当内侍を視る」「頼政賜菖蒲前」「軽女悲惜別」「重衡朗詠」また小野小町、紫式部、和泉式部、衣通姫などの宮中人物、上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)、女房等々、歴史のなかから画材を選んだ作画もあり、「唐美人」などのような支那の歴史から取材して描いたものもある、と言ったような……
これは私がそれぞれの時代の勉強からいろいろなかたちで影響されつつ描いた、言わば試作であり習作であったのですが、幼い頃から漢学、歴史は好き嫌いの別なく自分の修養の世界でありましたし、ことに絵画的場面をひと一倍興味深く読み覚えていたせいもありましょう。
私が一番最初に通った儒学者は市村水香先生で、その市村先生のところへは夜分漢学の素読やお講義を聴きに参りました。