石井 研堂
研堂釣規
人は、遊ばんが為めに職業に勉むるに非ず、職業に勉めしが為めに遊ぶなり。釣遊に、前後軽重の分別有るを要す。
日曜一日の休暇は、其の前六日間職業に勉めし賞与にして、其の後六日間の予備に非ず。若し、未だ勤苦せざるに、先づ休養を名として釣遊に耽らば、身を誤り家を破るの基、酒色の害と何ぞ択ばん。
単に、魚のみを多く獲んことを望むべからず、興趣多きを望むべし。
釣遊の目的は、素より魚を獲るにあれども、真の目的物は、魚其の物に非ずして、之を釣る興趣にあり。故に、風候水色の好適なる裡に、細緡香餌を良竿に垂れ、理想の釣法を試むことを得ば、目的こゝに達したるなり。魚の多少と大小は、また何ぞ問ふを須ひん。