薄田 泣菫
茶話
慈善家5・1女性
男といふものは、郵便切手を一枚買ふのにも、同じ事なら美しい女から買ひたがるものなのだ。――故ウヰルソンの女婿 McAdoo 氏はよくこの事実を知つてゐた。
あるとき McAdoo 氏が、自分の関係してゐるある慈善事業のために、慈善市を催したことがあつた。氏はその売子のなかに幾人かの美しい女優を交へておくのを忘れなかつた。
その日になつて、氏が会場の入口を入らうとすると、そこには紀念の花束を売りつけようとして、四五人の若い女たちが客を待つてゐた。そのなかに一人づばぬけて美しい女優が交つてゐたが、その女はかねて顔馴染な McAdoo 氏を見ると、顔一杯に愛嬌笑ひを見せ乍らいち早く歩み寄つて来た。そしてきやしやな指先きに露の滴るやうな花束をとり上げて、