久生 十蘭

骨仏

床ずれがひどくなって寝がえりもできない。梶井はあおのけに寝たまま、半蔀の上の山深い五寸ばかりの空の色を横眼で眺めていると、伊良がいつものように、「きょうはどうです」と見舞いにきた。

疎開先で看とるものもなく死にかけているのをあわれに思うかして、このごろは午後か夜か、かならず一度はやってくる。いきなり蒲団の裾をまくって足の浮腫をしらべ、首をかしげながらなにかぶつぶついっていたが、そのうちに厨へ行って、昨日飲みのこした一升瓶をさげてくると、枕元へあぐらをかき、調子をつけてぐいぐいやりだした。

那覇の近くの壺屋という陶器をつくる部落の産で、バアナード・リーチの又弟子ぐらいにあたり、小さな窯をもっていて民芸まがいのひねったような壺をつくっているが、その窯でじぶんの細君まで焼いた。

細君が山曲の墾田のそばを歩いている所を機銃で射たれた。他にも大勢やられたのがあってなかなか火葬の順番がこない。伊良は癇癪をおこして細君を窯で焼き、骨は壺に入れてその後ずっと棚の上に載っていた。浅間な焼窯にどんな風にして細君をおしこんだのかそのへんのところをたずねると、伊良は苦笑して、

青空文庫の作品カード